これから住宅を建てようと色々調べている中で、気密といった言葉を目にする方も多いのではないでしょうか。
気密は、これからの住宅には必須の性能です。
この記事では、住宅の色々な性能に関係する気密について紹介します。
また、気密を確保するための工法にはボード気密工法とシート気密工法がありますので、その違いや特徴を解説します。
気密って何?|住宅の隙間を埋める手法
表面上は分かりませんが、住宅には隙間があります。
隙間が多いと、室内の空気と室外の空気が移動しやすくなります。
隙間をなくし、室内と室外の空気の移動を防止する手法が、気密です。
気密はなぜ必要?
それでは、なぜ気密が必要になるのでしょうか。
気密は、住宅の住み心地に大きな影響のある、次の3つの重要な役割を担っています。
・室内と室外の熱の移動を防止する
・壁の中への水蒸気の流入を防止する
・換気の効率を上げる
これらの気密の役割について、順番に解説していきます。
室内と室外の熱の移動を防止する
一つ目の役割は、室内と室外の熱の移動の防止です。
熱は、高い方から低い方に移動します。
隙間をなくすれば、夏は室外の熱気が室内に流入しにくくなり、冬は室内の暖気が室外に流出しにくくなります。
また、気密性能が低いと、断熱材の効果を発揮できません。
断熱材は、滞留した空気を抱え込み、その空気で断熱しています。
室内と室外の空気が移動すると、必然的に断熱材の中を空気が移動しますので、断熱効果は低下してしまうのです。
よって、気密性能と断熱性能は密接に関係していると言えます。
壁の中への水蒸気の流入を防止する
2つ目の役割は、壁の中への水蒸気の流入の防止です。
壁体内結露といった言葉を聞いた経験があるでしょうか。
結露と聞くと、冬に窓に水滴がつくのをイメージする方が多いでしょう。
それと同様の現象が壁の中で起きるのが壁体内結露です。
壁の中には断熱材が入っていますが、結露して水に濡れてしまうと断熱性能が低下してしまいます。
また、グラスウールなどの繊維系の断熱材の場合は、水に濡れるとその重さで壁の下の方に垂れ下がってしまい、断熱材が入っていないのと同じになってしまいます。
気密を確保して隙間をなくし、壁の中への水蒸気の流入の防止が重要です。
換気の効率を上げる
3つ目の役割は、換気の効率の向上です。
現在建てられる住宅は、法律で24時間換気扇の稼働が義務付けられています。
設計上は、給気口から換気扇に向かって空気が流れ、家全体の空気が順次入れ替わるように想定します。
しかし、隙間が多いと、色々なところから空気が流入して、設計で想定したような空気の流れにはならず、汚れた空気が滞留し続ける場所が出てしまうのです。
気密を確保し隙間をなくせば、計画的な換気が実現できます。
気密性能の基準は?|C値を理解する
気密の必要性や役割が分かったところで、次に気密性能の基準について解説していきます。
結論から言うと、気密性能の基準はありません。
住宅の省エネ基準は国が定めていますが、その中に気密性能の基準値はありません。
ただし、壁体内結露を防止する措置が要求されており、間接的に気密性能について規定しています。
気密性能の値は、C値(相当隙間面積)で表します。
C値は、住宅の延床面積当たりどれくらいの隙間があるかを表しており、C値が低い方が、気密性能が高いです。
C値は低ければ低い方がいいですが、1.0以下が一つの目安です。
なお、C値は計算では算出できず、気密施工が終わった段階で実際に測定する必要があります。
気密工法の種類は2種類
気密を確保するための施工方法には、次の2種類があります。
・ボード気密工法
・シート気密工法
それぞれどのような工法で、どのような特徴があるのか解説します。
1.ボード気密工法|外側で気密
ボード気密工法は、住宅の壁の外側で気密を確保する工法です。
壁の外側には、構造用合板などの板が貼られています。
その板材で住宅を覆い、板材の隙間を気密テープで埋めて気密を確保する工法です。
現在の住宅は、柱や梁に貼られた構造用合板などの板材により、地震や風に対する耐力を確保している場合が多くなっていますので、ボード気密工法は合理的な工法と言えます。
ボード気密工法は、シート気密工法よりも施工がしやすいと言われています。
2.シート気密工法|内側で気密
シート気密工法は、住宅の壁の内側で気密を確保する工法です。
壁の内側に、防湿シート(水も水蒸気も通しにくいシート材)を貼り付け、シートの継ぎ目を気密テープでしっかり貼り付けます。
シート気密工法は、窓の周囲、コンセントやスイッチ部分などの施工に技術が必要になりますので、ボード気密工法に比べて難易度が高いです。
シート気密工法を採用する施工者に依頼する場合は、過去に施工した住宅の気密測定結果を聞いておくと安心です。
まとめ
気密とは、室内と室外の空気の移動を防止するものです。
気密を確保すると、住宅の次のような性能を向上させられます。
・断熱性能
・換気性能
気密は、C値(相当隙間面積)でその性能を表せます。
C値は低ければ低いほどいいですが、1.0以下とするのが一つの目安です。
また、気密を確保するための工法には、次の2種類があります。
・ボード気密工法
・シート気密工法
ボード気密工法の方が施工しやすく、施工者による差が生じにくいです。
シート気密工法は施工に技術が必要です。
シート気密工法を採用する施工者に依頼する場合は、過去に施工した住宅の気密測定結果を聞いておきましょう。